50代、なぜ自分のキャリアに「モヤモヤ」するのか?停滞感を解消する「キャリアの再設計」の「始め方」とは?

その「モヤモヤ」の正体は?

「50代を前にして、このままのキャリアでいいのだろうか」
「会社での役割は変わらないが、以前のような情熱を感じられない」
「かといって、今から何ができるというのだろうか」
もしあなたが今、そのような言葉にし難い「モヤモヤ」や、キャリアが足踏みしているかのような「停滞感」を抱えているとしたら。

湘南キャリアデザイン研究所でお話を伺った方の事例を少しだけご紹介します。

その方は、会社が合併し、環境の変化は受け入れつつも、「このまま今の仕事の延長線上で、自分は本当に幸せになれるのだろうか」という、静かな、しかし切実な疑問を感じ始めたとおっしゃいます。

その方の「モヤモヤ」の正体を、私はこのように受け止めました。

  • 昇進への期待が薄れ、キャリアの「閉塞感」があること。
  • 経営層が変わり、仕事の裁量が減り、報告などの「負担」だけが増えたこと。
  • そして、管理職として長年勤めてきたご自身の立ち位置に対して、「長くいるから、この役職にいるだけではないか?」という、漠然とした「不安」があること。

まさに、「キャリアの閉塞感」と「自分の本当の価値はどこにあるのか」という、言葉にし難い「モヤモヤ」に板挟みになっている状態です。

これをお読みのあなたも、どこか思い当たる節はないでしょうか。

「理屈はわかるが、そんな簡単に割り切れない」「そもそも、こんなことで悩む自分が情けない」

その「停滞感」は、これまで真剣に仕事に向き合ってきたからこそ生まれる、高潔な「悩み」であると、私は考えます。

あなただけではない。データが示す50代の「現在地」

「課題認識」と「行動」の大きなギャップ

その「モヤモヤ」や「停滞感」が、決してあなた一人のものではないことは、客観的なデータにも表れています。

一般社団法人 定年後研究所が2022年に実施した調査によれば、50代から60代の会社員のうち、キャリアチェンジ(転職や独立、学び直しなど)を視野に入れた行動を「特に何もしていない」と回答した人は、実に75%にのぼりました。
(出典:一般社団法人 定年後研究所「大企業における中高年社員のキャリア自律に向けた現状と課題」2022年

また、パーソル総合研究所が2023年に発表した調査も示唆に富んでいます。ミドル・シニア層(35~64歳)の70.1%が「学び直しの重要性」を認識しているにもかかわらず、実際に「学び直し」を実践している人は、わずか14.4%に留まっていたのです。
(出典:パーソル総合研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」2023年

なぜ、私たちは「停滞」してしまうのか

これらのデータが示すのは、先の管理職の方やあなたのように、「このままではいけない」「何かをしなければ」という課題認識(停滞感)を持ちつつも、具体的な最初の一歩を踏み出せずにいる方が、大多数であるという現実です。

頭ではわかっている。重要性も認識している。
それなのに、なぜ私たちは「停滞」してしまうのでしょうか。

それは、決して「怠けている」からでも「変わりたいと願っていない」からでもありません。
その「停滞」には、50代特有の、深く複雑な心理メカニズムが隠されているのです。

「停滞」は「終わり」ではなく、人生を見直す「絶好の機会」

モヤモヤの正体は、相反する感情の「せめぎ合い」

50代の「停滞感」は、単なる仕事のマンネリとは質が違うと、私は考えます。

それは、定年という人生の大きな節目がはっきりと見え始める中で、二つの相反する感情が、あなたの心の中で激しく「せめぎ合っている」状態なのです。

  • ひとつは、「このまま波風を立てず、定年まで現状を維持したい」という、安定を求める自分の思い。
  • もうひとつは、「いや、自分のキャリアはこんなものだったのか」「このままでは終わりたくない、終われない」という、もう一度輝きたいと願う自分の叫び。

安定と挑戦。現状維持と再点火。

この二つの強烈な引力が綱引きをしているからこそ、あなたの心は身動きが取れなくなり、「停滞」という「モヤモヤ」を引き起こしているのです。

なぜ「せめぎ合い」から抜け出せないのか

「このままでは終わりたくない」という後者の感情を満たし、停滞を打破するためには、まず「現在地(=現状)」を適切に把握し、自分が本当に「ありたい姿」との距離感を客観的に知る必要があります。

しかし、です。

私たちの多くは、まさにここで足が止まってしまいます。
なぜなら、その「ありたい姿」や「現在地」を知るための決定的なヒントが、自分自身の「過去」に隠されていることを、心のどこかで知っているからです。

「過去において、本当はやりたかったのに先送りしたことは何か」
「なぜ、自分は大事なことから目をそらし、それを先送りしがちだったのか」
そうした、自分が無意識に避けてきた「不」や、「先送りしたがる自分」を形成した根本的な理由を、この年齢になって、今さら直視したくない。

その「痛み」から目をそらし、本質的な問いを先送りするからこそ、「せめぎ合い」は解決しないまま、具体的な一歩が踏み出せず、「モヤモヤ」や「停滞」だけが続いていくのです。

私自身も「過去」と向き合うことで見つけた光

実は、これは私自身の「原体験」でもあります。

私は、30年以上にわたり大手食品メーカーや学校法人で人事(HRM)の専門家としてキャリアを歩んできました。しかし、その道中で、不本意な異動や「このままでいいのか」という強烈な「不」を感じ、深く悩んだ時期が確かにありました。

まさに、自分が見たくない「過去」や「先送りしてきた自分」と、強制的に直視させられるような状況でした。

しかし、今振り返れば、「停滞」の渦中で、その痛みを伴う「過去」と徹底的に向き合い、自分の経験を一つひとつ棚卸しした経験こそが、現在の私の事業の「原点(入り口)」となっています。

「停滞」とは、キャリアの「終わり」ではありません。
むしろ、「過去」という名のあなたの最大の資産に、本気で光を当てる時が来たという、人生からの「絶好の機会」を告げるサインなのです。

「キャリアの停滞」を乗り越えるための3つの具体的な「ヒント」

では、その「停滞」を乗り越え、「モヤモヤ」を晴らすために、私たちは具体的に何をすればよいのでしょうか。
ここでは、私がご支援する「キャリアのリノベーション」の核となる、3つの「ヒント」をご紹介します。

ヒント1:未来から「今」を照らす(価値観の明確化)

一つ目のヒントは、視点を「未来」に移すことです。
といっても、「定年後に何をしようか」という単純な計画ではありません。
「会社での出世」や「収入」といった、これまでの物差し(他人の評価軸)ではなく、「自分は、誰に、何を残したいのか」という、人生の最終地点から「今」を逆算して照らす視点を持つことです。

これが、私たちが「終活」をキャリアデザインの「原点(入り口)」と捉える理由です。

「終活」は、死の準備ではなく、あなたの「価値観」を明確化する作業です。
人生の終わりから逆算して初めて、「他人の目」を気にしたものではない、あなただけの「人生の羅針盤」が手に入ります。この羅針盤こそが、「停滞」という霧の中で進むべき方向を教えてくれるのです。

ヒント2:過去の「経験」に光を当てる(経験価値の再発見)

二つ目のヒントは、その「人生の羅針盤(=価値観)」が指し示す「ありたい姿」を支える、あなただけの「資産」に光を当てることです。

あえて、先ほど述べた「直視したくない過去」=「経験」という名の資産にです。

これが、湘南キャリアデザイン研究所が「終活」の次に大切にする「自分史(自分の歴史)」の振り返りです。

単なるノスタルジックな思い出話ではありません。

あなたがこれまで無我夢中で歩んできた中で、自分では「当たり前」すぎて見過ごしてきた「価値」を再発見する、極めて戦略的な作業です。

「停滞」していると感じるとき、私たちは自分の「価値」を最も見失っています。
「自分史」は、その「価値」を自分の言葉で取り戻すための、ヒントの宝庫なのです。

ヒント3:「幸運」を掴むための「準備された心」を持つ

「未来(終活)」と「過去(自分の歴史)」の軸が定まったら、最後は「今」の捉え方です。

2025年、ノーベル化学賞を受賞した京都大学の北川進 特別教授の逸話が、私たちに大きなヒントを与えてくれます。

北川教授は、受賞会見の場で、子どもたちへのメッセージとして、19世紀フランスの細菌学者ルイ・パスツールの有名な言葉を引用してお話されました。

「幸運は準備された心にのみ宿る」(『Fortune favors only the prepared mind.』)

北川教授ご自身も、研究過程で「想定外」にも材料に「無限の孔(あな)」が開いていることを発見し、それを失敗ではなく「面白い」と捉えたことが、世界的な大発見に繋がったといいます。

まさに、長年の研究という「準備された心」があったからこそ、単なる想定外(=偶然)を、世紀のチャンスとして掴むことができたのです。
50代のあなたの「停滞感」も、見方を変えれば、キャリアにおける「想定外」の現象に過ぎません。

そして、あなたには、他の誰にも真似できない、これまで数十年間積み上げてきた「経験」という名の、分厚く、豊かな「準備された心」が、すでにあるのです。

「キャリアのリノベーション」こそが、最高の「準備」である

「自分の歴史」と「終活」が「準備された心」を磨き上げる

北川教授が言うように、幸運は「宝くじ」のように突然当たるものではありません。

では、50代の私たちが、次の幸運(=キャリアの突破口)を掴むためにすべき「準備」とは、具体的に何でしょうか。

それこそが、これまでにご紹介した「終活」と「自分の歴史」を振り返ることで、50代のキャリアをリノベーションすることです。

  • 「終活」を通じて、「誰に何を残したいか」という視点から、あなたの「価値観」という羅針盤を明確にする。
  • 「自分の歴史」の振り返りを通じて、あなたが無意識のうちに積み上げてきた「経験」や「価値」を丁寧に棚卸しし、磨き上げる。

この二つのプロセス(=キャリアの内省)によって、あなたの「準備された心」は、次の幸運を掴むための最高の状態に整えられます。
「モヤモヤ」や「停滞」は、この「準備」を始めなさいという、あなた自身からのサインなのです。

キャリアのリノベーションという新たな選択肢

この「準備」を経てこそ、単なる転職や再就職(リフォーム)ではない、これまでのキャリア(人生)を最大の資産として捉え直し、再設計する「キャリアのリノベーション」が可能になります。

「停滞」している今だからこそ、これまで培ってきた経験(=準備された心)を携えて、あなただけの「価値観」で、人生の後半戦を再設計し直す(デザインし直す)。

これは、自分の言葉で、自分のキャリアをよりよくする、主体的な活動です。

まとめ

50代の「モヤモヤ」や「キャリアの停滞」は、恥じることでも、恐れることでもありません。
それは、あなたがこれまで真剣に仕事に向き合い、今また、人生と誠実に向き合おうとしている「証(あかし)」です。

あなたの手の中には、すでに「経験」という名の、素晴らしい「準備された心」があるのです。

もし、その「モヤモヤ」の正体を、一度じっくりと誰かに話してみたい。

そして、ご自身の「経験」という名の宝物を一緒に掘り起こし、次の幸運を掴むための「準備」を始めてみたい。
そう感じた時には、湘南キャリアデザイン研究所の「キャリア・リノベーション相談」のことを、そっと思い出していただけたら嬉しく思います。

お話しできることを、楽しみにしています。

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