50代、転職か、残留か。「仕事の行き詰まり」の根本を解消する、6つの問いとは

「50代、仕事がどうにも行き詰まっている」
「上司との関係もきつい。もう辞めたい」
「辞めたいけど、次がない。この年齢で転職は非現実的だ」
Googleの検索窓に、そんな言葉を打ち込んでしまう夜はありませんか。

「転職か、それとも定年までこのまま残留か」

その二択の間で葛藤し、身動きが取れなくなってしまう。
50代のビジネスパーソンが直面する、非常に切実な悩みです。
湘南キャリアデザイン研究所へ相談されるケースでも、まさに「行き詰まり」「辞めたい」「転職きつい」「後悔」といった、切実な言葉が並びます。

皆さん、理屈ではわかっているのです。「このままで良くない」ことも、「かといって安易な転職はもっと危ない」ことも。しかし、そのいずれをも選択できず、躊躇し足踏みしてしまう。
まるで、長年乗り続けた愛車のダッシュボードに、「警告灯」がチカチカと点滅している状態。なんらか対処した方がいいけれども、運転には差し支えないと判断して、様子見をしてしまうような感じでしょうか。そして、いつか対処すべきと思いつつも、不安な気持ちで運転を続けているような状態とも言えます。

このように、あなたの心の中で、「警告灯」が点滅しているのではないでしょうか。
あなたの「くすぶり」や「行き詰まり」は、「言葉にできないあなたの心の警告灯」が正体ではないでしょうか。

この記事では、その「警告灯」を消すための、安易な「転職(車の買い替え)」や「諦め(見て見ぬふり)」ではない道についてお話しします。

それは、あなたのキャリアという「愛車」を、なにが不調であるか点検し、その「愛車」の価値を維持し高めていく、つまり、「より良く再設計する」という道です。
湘南キャリアデザイン研究所は、それを「キャリアのリノベーション」と提唱しています。

なぜ50代は「キャリアの警告灯」が点滅するか

50代の「行き詰まり」は、単なる「気の持ちよう」ではありません。

役職定年による役割の変化、積み上げてきた経験が通用しなくなる感覚、求められる貢献の変化、体力とのギャップ、あるいは、部下や上司との人間関係の変化。

これらは、50代のビジネスパーソンのキャリアにおいて大きな転換点のきっかけとなる事柄です。

転換点において、自分の中でなんとも言えない違和感(「警告灯が点滅している」)があるにも拘わらず、多くの人がここで「なんとなる」「しかたのないこと」と判断してしまいがちです。時間の経過とともに、その違和感が消えていくならばよいものの、そうではない場合は、かえって事態をこじらせてしまいます。そういうケースを、私は(HRMの専門家として)数多く見てきました。

こういった「自己流の対処」には、大きく二つの型があります。

【自己流の対処パターン】

  • 1. 「放置・見守り」型
    「もう50代だ」「年のせいだ」「どうせ会社もわかってくれない」
    「定年まで、あと数年。波風立てず、このままやり過ごすしかない」
    警告灯(=不)の点滅から目をそらし、根本的な原因から「逃避」してしまうパターンです。
    もちろん、それも一つの選択ではあります。
    しかし、「不」の状態を放置・見守ろうと決めた数年間、あるいは十数年間、「不」という警告灯が点滅し続ける車に乗り続けるのは、あなたの心を確実にすり減らしていきます。
    その時間は、本当にあなたの人生にとって「誇りある時間」と言えるでしょうか。
  • 2. 「自己流修理」型
    もう一つの罠は、「行動している”つもり”」になってしまうことです。
    根本的な原因を見定めないまま、転職情報サイトを夜な夜な眺めてみる。あるいは、問題解決に役立ちそうなYouTube動画を視聴し、その瞬間は「なるほど」と納得する。
    それらの行動は、一時的に「何かをやっている」という安心感を与えてくれるかもしれません。しかし、それはあくまで「一時的な気持ちの安定」です。
    警告灯が点滅して根本原因が解消されない限り、あなたの「辞めたい」「行き詰まっている」という感覚は消えることがないからです。

それどころか、勢いで「転職」や「退職」を意思決定してしまうと、「不」を指し示す「警告灯」が消えないどころか、別の場所で再び点灯してしまいます。
つまり、50代からのキャリアは、ますます行き詰まってしまいます。

真因は「スキル」や「役割の変化」に加えて、「自分自身の解釈」

では、その「警告灯」の真因、あなたの「行き詰まり」の根本原因はどこにあるのでしょうか。

「それは、自分のスキルがもう古いからだ」
「今の会社で評価される能力が、自分には欠けているからだ」
そうお考えになるかもしれません。
もちろん、スキルが通用しなくなったり、役割が変化したことに起因している可能性はあります。

しかし、50代の「行き詰まり」の真因は、多くの場合は、それらに限ったことではないのです。本当の原因は、あなた自身が持つ「過去の経験への解釈」のバイアスにあるのです。

どういうことか。
あなたが今、「もう価値がない」「思い出したくもない」と「不の塊」のように感じている、過去の経験。
例えば、不本意な異動、理不尽な評価、キャリアの停滞、あるいは失敗の記憶。
それらの「事実」を、あなたが、「どうせ自分は評価されない」「あの時の失敗がすべてだ」「自分のキャリアはもう終わりだ」と“解釈”している。

その「解釈」こそが、あなたの新しい行動を縛り、前向きな思考を停止させ、キャリアを行き詰まりに追い込んでいる「警告灯」の本当の原因だとしたら?

部品(スキル)を交換しても、OS(解釈)が古いままでは、車は快適に走らないのです。

あなたの「不の塊」は、専門家が見れば「宝の原石」かもしれない

なぜ、私がこれほど「解釈」の重要性をお伝えするのか。
それは、私自身がその「解釈」のバイアスに縛られ、キャリアの「行き詰まり」に深く苦しんだ経験を持つからです。私は、HRMの専門家でありながら、40代で転職した先で「自分の居場所」を見失い、キャリアの選択に失敗したと深く恥じ、2年間もがき苦しんだ過去があります。

当時は「不の塊」でしかなかったその経験。
「なぜ、HRMのプロである自分が、こんなはずでは」
「もう自分のキャリアは終わりだ」

その「解釈」が、私を灰色の日々に閉じ込めていました。
しかし、クランボルツ博士の「計画的偶発性理論」を学び直す中で、一つの光が差し込みました。「一見バラバラに見える経験(点)も、後から振り返れば一本の線として繋がる」
「この『失敗』と解釈している経験こそが、次のキャリアを拓く『宝』なのではないか」
そう「解釈」を変え、自分の過去の経験価値を徹底的に分析し直したのです。

「不本意な異動」は、「組織のコンフリクトを最前線で調整した希少な経験」と解釈し直せる。「転職の失敗」は、「キャリアに迷う人の痛みを誰よりも深く理解できる、専門家としての原体験」と解釈し直せる。

かつて「荒地」だと思っていた土地が、実は「宝物をたくさん抱えた恵まれた土地」だった。
そう気づいた瞬間でした。
このように「解釈」を捉え直すことで、私にとって「不の塊」であった経験は、その「意味」を再解釈することで、現在の湘南キャリアデザイン研究所の核となる「宝の原石」に変わりました。

あなたの「不」も同じかもしれません。
あなたが「失敗だ」「もう価値がない」と解釈しているその経験は、「キャリアをよりよくする(キャリアのリノベーション)」の視点から見れば、「希少な経験」であり、「葛藤」であり、あなたの深い価値観を示す「何物にも代えがたい宝の原石」と捉え直すことができるかもしれないのです。
安易に転職(=車を買い替える)を選ぶ前に、あなたの車(=キャリア)に眠る「隠れた資産(=宝の原石)」を、もう一度、鑑定してみませんか?

なぜ自分一人では「宝の原石」に気づけないのか?

「なるほど、解釈を捉え直せばいいのか。それならばやれそうだ!」
そう思われたかもしれません。

しかし、ここでお伝えしたいことがあります。
それは、「自分のことは透明化する」という原則です。

例えば、皆さんも会社で経験されたことがあるかもしれません。

会社の幹部が、自社の中長期計画したり、全社的な構造改革を構想するとき、外部のコンサルティングファームに依頼するケースを。

なぜでしょうか?

自分の会社の根幹にかかわる経営課題にもかかわらず、会社の幹部が、第三者の知見を求める理由は、「自分たちこそが、『自社の常識』や『これまでの成功体験』という名の『解釈のバイアス』に最も強く囚われている」と、認識しているからです。

「社内の人間(自分)」には当たり前すぎて「透明化」して見えない、根本的な課題や、あるいは「本当の資産(宝の原石)」。それを、「コンサルタント(外部の専門家)」の客観的な視点で「言語化」し、その背景や根本原因を分析することを委託し、自社の構想を練り上げるのです。

50代のキャリアに関しても、同じように捉えることができます。

「自分のこと」だからこそ「透明化」し、自分を縛る「解釈のバイアス」には気づけない。
「不の塊」だと思い込んでいるその「解釈」こそが、バイアスそのものかもしれないのです。
そして、「くすぶり」や「モヤモヤ」の正体は、この「言語化」できていない感覚そのものです。

「言葉で表現できないことは認識できない」

これは、キャリアを考える上で、私が大切にしている考え方の一つです。

だからこそ、あなたの「不」を「宝の原石」へと転換するためには、第三者的な捉え方を踏まえて「言語化」し、解釈を捉え直すプロセスが、不可欠なのです。

キャリアの「リノベーション」の第一歩

湘南キャリアデザイン研究所は、50代からのキャリアのリノベーションを提唱しています。たった一度の人生を、より良い人生にするためには、納得できる選択を、自律的に導き出すことが必要です。
ゆえに、湘南キャリアデザイン研究所は、単に転職することをおすすめしません。

まず、あなたの「警告灯(不)」の根本原因を「言語化」し、あなたのキャリアを「より良く再設計する(リノベーション)」ことから始めます。

その第一歩は、ご自身の「価値観」に触れてみることです。
「経営コンサルタントが外部の力を借りる」のと同じ理由で、この「捉え直し」を、ご自身で完璧に行うのは難しいかもしれません。では、私たち専門家が、あなたのOSを診断する際に、どのような「問い」から始めるのか。その核心的な入口となる「6つの問い」をご紹介します。これは、あなたの「価値観」の源泉に触れるための、非常に強力な問いかけです。

【6つの問い:終活の視点をもって「価値観」をひもとく】

湘南キャリアデザイン研究所が提唱する「終活」は、「ヒト、モノ、コト、カネ」に関して「誰に何を残し、誰に何を託すか」という視点で捉えます。
6つの問いは、「価値観」につながる入り口です。

【ヒト】に関する問い

  • 1. 「誰かの背中をそっと押してあげた、あなたの一言」を思い出してください。その一言を、今、誰の心に一番残したいと思いますか?
  • 2. 「人生は思い通りにならないことの連続だ。しかし…」その後に続く、あなたの「経験から得た教訓」を、今まさに立ち尽Lくしている大切な人に伝えるとしたら、どのような言葉を投げかけますか?

【モノ】に関する問い

  • 3. あなたの人生で、たった一つだけ「モノ」を残せるとしたら、それは何ですか? そして、それを誰に、なぜ残したいですか?

【コト】に関する問い

  • 4. あなたが経験した、一番「誇らしい経験(コト)」は何ですか?
  • 5. 逆に、一番「手痛い経験(コト)」は何ですか? そのありのままの経験を、今、誰かに残す(伝える)としたら、どんな意味づけをしますか?

【カネ】に関する問い

  • 6. あなたの資産(カネ)の中から、特に「誰か」に残したいと思うものは何ですか? その人に、その資産を「残したいと」思った、あなたの素直な理由(価値観)は何ですか?

いかがでしょうか。

これらの問いに答える時、あなたの心に浮かぶ「誰か」や「出来事」、そして「理由」こそが、あなたの「経験価値」の核である「価値観」の正体を知るヒントになります。

その「問い」の答えの背景にこそ、あなたの「過去の経験や未来への期待に関する価値観」が隠されています。ゆえに、この「6つの問い」を入口として、「自分の価値観を発見するために、自分を取り巻く「不(不信、不満、不足、不遇…)」を、仕事と私生活の両面から棚卸しすることで、「言語化」するネタを整理します。
その「不」がいつ生まれたのか、可能なかぎり具体的に「成し遂げたこと」「失敗したこと」「尊敬する上司」などを棚卸しし、あなたの歴史から「強み」と「弱み」の根拠を紐解いていきます。

「6つの問い」は、自分の価値観を確かめる最初の入り口になるとお伝えしました。

まとめ:50代のキャリアの行き詰まりは、放置しないことが大切

50代の「行き詰まり」は、キャリアの「諦め」「終わり」ではありません。

自分の過去の出来事や未来への期待を、自分の言葉で言語化し、経験価値を捉え直す機会と捉えるべきなのです。
「経験価値」を捉え直すことは、自分自身の価値をアップデートすることにほかなりません。

もしかすると、あなたの心のダッシュボードに警告灯が点滅していても、恐れることはありません。「辞めたいけど、次がない」という葛藤を、あなたの「本当の価値観」に気づくための機会と捉え、納得できる50代からのキャリアを選択していくことができるからです。

「行き詰まり」は放置せず、その一歩を踏み出すことを、心から応援しています。

50代のキャリアの転換期を前に、納得のある決断をすることを目指したい人への記事です。
最新情報をチェックしよう!