1. 「セカンドキャリア」という言葉に、焦っていませんか?
「いよいよ自分もセカンドキャリアを考える年齢になったのか」
「若いころ、セカンドキャリア研修に参加している50代の人を見て、哀れに思っていたけど、今度は自分の番か・・・。」
「50代を迎え、定年や役職定年も現実のものとしてセカンドキャリアが視野に入ってきた」
「とはいえ、自分に『やりたいこと』なんて、今さらあるのだろうか?」
「『やりたいこと』を見つけようにも、何から手をつけていいか、さっぱりわからない」
もし、あなたが今、このような「不」の感情やモヤモヤを抱えていらっしゃるならば、一刻も早く解消することをおすすめします。
1-2. モヤモヤは、真面目に生きてきた「証」
50代になって「やりたいことが見つからない」のは、あなたが怠けていたからでも、能力が低いからでもありません。
むしろ、それは、あなたがこれまで「〇〇社の部長」として、「〇〇家の父(母)」として、「頼れる上司」として、ご自身の「やりたいこと(Want)」よりも、目の前にある「やるべきこと(Must)」を最優先し、その責任を誠実に、真面目に果たし続けてきた「証」であると、私は考えます。
あまりにも長い間、ご自身の内なる声に耳を傾けることを後回しにしてこられました。だから今、急に「あなたのやりたいことは?」と問われても、その声が小さく、聞こえにくくなっているのです。
この記事では、なぜ50代になると「やりたいこと」が見つかりにくくなるのか、そのメカニズムを5つの深層心理から丁寧に紐解き、モヤモヤを解消する手がかりをつかんでいただくことを目的としています。
その答えを見つけるための「確かなヒント」は、どこか遠くの未来にあるのではなく、あなたご自身が歩んでこられた「過去の経験」という宝の山に眠っていることをお伝えします。
2. 「セカンドキャリア」の本当の意味とは?
2-1. 社会の捉え方:「第二の仕事」という誤解
そもそも「セカンドキャリア」と聞くと、どのようなイメージが浮かぶでしょうか。
多くの方は、セカンドキャリアを考える必要性は認識しているものの、具体的に検討している人はごく少数です。産業雇用安定センターの「ミドルシニアのセカンドキャリア意識調査」(2025年 )https://www.sangyokoyo.or.jp/topics/2025/mid-senior_secondcareer_20250902.html )では、つぎのような示唆があります。
「まだ決めていない」という方が約3割に上る一方、転職希望者の中には「新しい仕事に挑戦したい」という前向きな声(約3割)という声があります。一方で、「定年を機に働くのをやめたい」と考える層も約3割ほど見受けられます。50代の意識が多様化している現実がうかがえます。
セカンドキャリアとして、転職や独立することを希望する動機としては、
- 「これまでと違う新しい仕事に取り組みたい」が約34%
- 「スキルや経験を他社または独立で活かして活躍したい」が約26%
両者合わせて約6割が「新しい挑戦」や「経験の活用」を志向しています。
一方で、新たなチャレンジをしようにも、50代後半から正規雇用の比率が大幅に下がるという厳しい現実も示されています。
これらのデータから見えてくるのは、一般的に「セカンドキャリア」とは、「定年後の再就職」や「転職」「起業」といった「仕事(Work)」の変化として捉えられがちです。そこには「老後資金への不安」や「処遇の低下」「新しい職場への不安」といった、現実的な問題が色濃く影を落としている姿です。
2-2. 湘南キャリアデザイン研究所の捉え方:「生き方そのもの」の再設計
しかし、あなたの「キャリア」とは、本当に「仕事(Work)」だけを指すのでしょうか。
私は、そうは考えません。
「キャリア」とは、あなたの「人生(Life)」そのものです。「人生」という大きな器の中に、「仕事」も、「家庭」も、「地域との関わり」も、そしてあなた自身の「価値観」も、すべてが含まれています。
だからこそ、私たちが提唱する50代からの「セカンドキャリア」とは、表面的な「仕事」を変えることではありません。
それは、「人生の後半戦を、どのような価値観を大切にして生きていくか」という、「生き方そのもの」を再設計(リノベーション)することです。
この「キャリアのリノベーション」を実現するためには、まず「やりたいこと」の源泉となる、あなた自身の「価値観」を知る必要があります。
ですが、冒頭でお伝えした通り、多くの50代が「やりたいこと(=価値観)」を見失っているケースを目にします。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか。
3. なぜ、50代は「やりたいこと」が見つからないのか?(5つの深層心理)
「やりたいことが見つからない」状態を、5つの深層心理から解き明かしていきます。ご自身に当てはまるものがないか、少し立ち止まって考えてみてください。
3-1. 理由1:「役割(ペルソナ)」との過度な同一化
50代の真面目なビジネスパーソンであるあなたは、重責を担ってきた方です。長年にわたり「会社での役割」「親としての役割」といった社会的な「役割」を背負い、懸命にそれを果たそうとされてきました。
しかしながら、その役割を果たすことと引き換えに、個人の純粋な欲求(Want )よりも、「役割として求められる行動や判断(Must)」を最優先することが、思考と行動の習慣になっているのかもしれません。
この状態が30年近く続くと、どうでしょうか。
「役割としての自分」と「“素”の自分」の境目が見えなくなってくる。
「役割として求められること」を「自分がやるべきこと」だと認識する。
「“素”の自分」が何を感じ、何を望んでいるかに意識を向けなくなる。
こんな状態に陥るのではないでしょうか。
役職定年などでその重い「役割」が外れる(あるいは外れそうになる)と、長年一体化していた自分を支える柱の喪失感を強烈に感じます。
その喪失感の大きさも影響して、「役割から離れた“素”の自分」が何を望み、何に喜びを感じるのか、その感覚自体がわからなくなってしまうのです。
3-2. 理由2:「やるべきこと(Must)」による「やりたいこと(Want)」の蓋
特に「家族のため」「会社のため」という強い責任感と誠実さをお持ちの方ほど、この傾向は強くなります。
日々の生活や仕事において、「(自分の)やりたいこと(Want)」と「(他者・組織から求められる)やるべきこと(Must)」が天秤にかかる場面は、数え切れないほどあったはずです。
そのたびに、ほぼ常に「Must」を選択し続けなければならなった。
「Want」は選択したくてもできない状況。ご自身でご自身の内なる声に、何度も蓋をしてこられたのではないでしょうか。
この「Want」への抑圧と選択したくてもできない状態を何十年も繰り返した結果、ご自身の「Want」に対する感度の著しい低下を招きます。
分厚い「Must」の層で自分の内心を固く蓋をしてしまったため、いざ「Want」を探そうとしても、どこにあるのか見つけ出すことが極めて困難になっているのです。
3-3. 理由3:「ビジネス的思考」の弊害(=外部評価軸への依存)
あなたがビジネスパーソンとして、長年にわたり「成果」「効率」「生産性」「市場価値」を意識されてきたと思います。
客観的かつ「外部の評価軸」で物事を判断し、成果を出す毎日。ビジネスの世界で生き抜くための、強力な武器であったはずです。
しかし、この「外部評価軸による判断」は、強力な武器であると同時に、あなたの「思考のクセ」として、ときに自分を苦しめる武器にもなるのです。
そのため、「やりたいこと」という、本来は極めて主観的で内面的な欲求(Want)を探す場面においても、無意識にその「外部評価軸」を持ち込んでしまうのです。
例えば、「○○したい」という純粋なWantが芽生えた瞬間に、「それが何の役に立つのか?」「収益性は?」「人との差別化は何か?」というビジネス的思考が自動的に作動します。
そして、「役に立たない(=価値がない)」「無理、できない」とご自身でジャッジし、その芽を摘み取ってしまうのです。この「無意識のジャッジ」を繰り返すため、「やりたいこと(と呼べるような価値あるもの)は何も見つからない」という結論に至ってしまいます。
3-4. 理由4:「失敗」に対する極端な恐れ
50代は、組織内での地位、社会的信用、築き上げてきたご家族の生活など、「守るべきもの」が人生で最も多くなる年代です。
若い頃とは異なり、「今、大きな失敗をすれば失うものが大きい」「リカバリー(やり直し)する時間も体力も限られている」という、現実的なリスク認識が強まるのは当然のことです。
一方で、「(これまでやってこなかった)やりたいこと」への挑戦は、「未知の領域」への挑戦です。うまくいく可能性は保証されていません。期待外れ、恥をかく、時間やお金の損失というリスクを必ず内包しています。
そのため、「やりたいこと」が頭に浮かんでも、即座に「失敗するリスク」が計算され、「そのリスクを許容できない」という判断をもってしまいます。
この「失敗への恐れ」が強力なブレーキとなり、「リスクを冒してまでやりたいこと」の基準(ハードル)を極端に引き上げてしまうのです。
結果として、ほとんどのWantが探求の対象から除外され、「(挑戦できるような)やりたいことは見つからない」という結論に至ります。
3-5. 理由5:「やりたいこと=大きなこと」という誤解
メディアや世間では、「セカンドキャリア」「人生後半」といった文脈で、「起業」「社会貢献」「地方移住」など、大きく変わる挑戦(=社会的に価値があると分かりやすく認められるもの)が成功事例として取り上げられがちです。
これにより、「50代から見つける“やりたいこと”とは、そのような『大きなこと』でなければならない」という無意識の刷り込み(誤解)が生じていないでしょうか。
しかし、多くの人にとっての純粋なWantは、「昔好きだった趣味にじっくり取り組みたい」「近所のカフェでゆっくり読書がしたい」「妻(夫)と、行ったことのない場所へ旅行したい」といった、もっと日常的でささやかなものである場合が少なくありません。
この「大きなことでなければならない」という誤ったフィルターを通してご自身の内面を探すため、足元にあるはずの「ささやかなWant」の種は、「こんなことは“やりたいこと”と呼ぶに値しない」と見過ごされ、無視されてしまうのです。
4. 「やりたいこと」は「過去」にある。「振り返り」こそ未来への投資
4-1. 答えはあなたの「内側」にある
では、どうすればその「誠実な価値観」や「やりたいこと」を見つけることができるのでしょうか。
もし、あなたがこれら5つの心理のどれかに縛られ、ご自身の「外側」に答えを探そうとしているなら、視点を変えることをおすすめします。
答えは、あなたの「内側」にあります。
あなたがこれまで生きてきた、「過去の経験」という唯一無二の財産の中に、必ず眠っています。
そのために必要なこと。それは、「今一度、自分の時間を止めて、振り返ること」です。
これこそが、「やりたいこと」を見つけるための、唯一にして最大の鍵となります。
4-2. 「過去を振り返って何になる」のか
「理屈はわかるが、忙しくてそんな時間はない」
「過去を振り返って、今さら何になるというのか」
そうしたお気持ちになるのも、無理はありません。
確かに、ご自身の過去と向き合うには、一定のまとまった時間が必要です。しかし、その時間は決して「消費」する時間ではありません。
5. 50代の「やりたいこと」の見つけ方:2つのステップ
湘南キャリアデザイン研究所では、「50代からのキャリアをリノベーション」することを提唱しています。
5-1. ステップ1:「終活」で自分の価値観を見定める
「キャリア」の話をしているのに、なぜ「終活」なのか、と驚かれたかもしれません。
ですが、湘南キャリアデザイン研究所が提唱する「50代からのキャリアのリノベーション」の「入り口」は、まさしく「終活」にあります。
私自身、親の看取りや実家じまいを経験する中で、「終活」とは単なる「死の準備」ではないと痛感しました。
「終活」とは、「ヒト」「モノ」「コト」「カネ」を通して、「誰に、何を残し、誰に何を託したいか」を真剣に考える、極めて主体的で前向きな行動です。
この問いは、あなたの人生で「本当に大切にしたい価値観」を、心の奥底から浮き彫りにします。
「やりたいこと」の源流は、「あなたの価値観が満たされる行動」に潜んでいます。
まずは「終活」というプロセスを通じて、50代からのキャリアの後半戦を照らす、揺るぎない「価値観」を見定めること。これが最初のステップです。
5-2. ステップ2:「自分の歴史」を振り返り、経験を価値に変える
価値観の方向性が見えてきたら、次に、その価値観が「どのように」あなたに宿ったのか、その経緯を振り返ります。その価値観が、「なぜ」あなたにとって大切なのか、その源泉を振り返るということです。
そのために行うのが、「ビジネスパーソンとしての自分の歴史」への取り組みと、自分が経験してきた出来事の「価値分析」です。
あなたがどのような経験を通じて、その価値観を形作ってきたのか。
特に、楽しかったこと、成功したこと以上に、あなたが「壁にぶつかった経験」や「不を感じた経験」こそが、あなたの価値観の源泉となっています。
それらの経験を一つひとつ丁寧に拾い集め、「なぜあの時、自分はそう感じたのか」と意味づけをし直し、価値に変える。そのように価値化された経験の積み重ねが、50代からのキャリアをより良くする確かな土台となります。
「やりたいこと」とは、ゼロから「見つける」ものではないと、私は考えます。「終活」で見定めた自分の価値観を手に、あなたの「歴史」という宝の山に埋もれている「やりたいことの種」を、ご自身の言葉で「掘り起こす」作業なのです。
6. 結論:焦らず、まず「あなたの歴史」を紐解くことから
6-1. あなたの「やりたいこと」は、あなたの中に必ずある
50代からのセカンドキャリアを考えるとは、無理に「やりたいこと」を外に探す必要はありません。焦る必要もありません。
- 「やりたいことが見つからない」のは、あなたが真面目に、誠実に生きてきた証であると知る。
- その原因となっているかもしれない「5つの深層心理」と自分の内心を照らし合わせる。
- 湘南キャリアデザイン研究所が提唱する「50代からのキャリアのリノベーション」を思い出してください。
- ステップ1:「終活」であなたの「価値観(羅針盤)」を見定める。
- ステップ2:「自分の歴史」を振り返り、その価値観に紐づく「やりたいことの種」を掘り起こす。
まずは「自分の時間を止めて」、あなただけのユニークで豊かな「歴史」を、ゆっくりと紐解くことから始めてみませんか。
6-2. あなたの「キャリアのリノベーション」という旅路に
とはいえ、ご自身の「過去の経験」という宝の山を、お一人で掘り起こし、客観的に「価値」として言語化するプロセスは、簡単なことではないかもしれません。
時には、その旅路に、信頼できる伴走者が必要だと感じられることもあるかと思います。
もし、50代のいまだからこそ、自分のこれからを徹底的に振り返ってみたいと感じられたならば、ぜひ、湘南キャリアデザイン研究所の「キャリア・リノベーション相談」をご活用ください。
思っていること、感じていることを自分の言葉として、「口にする」「話すこと」があなたの「やりたいこと」を見つける入り口になるはずです。