50代で会社での居場所に戸惑う方へ。「役割の変化」を戦略的に活用する3つの視点

「かつてのように成果を出しても、昔ほど評価されない」
「後輩の『育成』をしろと言われるが、具体的にどう接していいか分からない」
「ふとした瞬間に、自分はもう頼りにされていないのではないかと痛感する」
「もしかして、会社での『役割』はもう終わったのだろうか…」
「管理職として成果を出すことには自信があったはずなのに、ある時期から、どうも組織の歯車と噛み合わない。」
頼りにされていないと感じる
自分の立ち位置、居場所を自分で感じとれない

50代を迎え、このような言葉にできない「居場所のなさ」や「戸惑い」を感じてはいませんか。

もし、あなたがそうした「モヤモヤ」を少しでも感じているとしたら、この記事をご一読ください。

この記事では、「お役御免」などではない、50代のビジネスパーソンが直面する「壁」の正体と、それを逆手に取り、あなたのキャリア後半戦を輝かせるための「3つの新しい役割」について、私自身の経験とHRMの専門知見から具体的にお伝えします。

お伝えしたいことは、あなたの「居場所」を戦略的に創り出すための具体的なヒントです。


なぜ、あなたの「評価」と「居場所」は変わったのか?

まず、最も重要な事実をお伝えします。
あなたの「居場所のなさ」や「評価されていない」という感覚は、必ずしもあなたの能力が劣化したからではないということです。
それは、あなたの会社における「役割」そのものが、変わりつつあることが大きな要因だからです。

1. 「70歳就業時代」という時代の変化

最大の要因は、私たちが「働く」期間そのものが変わりつつあることです。

2021年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」により、企業は70歳までの就業機会を確保することが「努力義務」となりました(厚生労働省の発表)。

(参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保」

これは何を意味するでしょうか?
会社にとって、50代はもはや「上がり」の人材ではなく、あと10年、15年と価値を発揮し続けてほしい「中核人材」になってほしい。

経験豊富な50代のビジネスパーソンに対して、会社はこのような期待を投げかけるのではないでしょうか。

会社は「この先10年以上、プレイヤーとは“別の価値”で貢献してくれ」と考えているはずです。

ただし、経験を価値として会社に提供し、貢献する人にかぎってです。

2. 「個の力」から「組織の力」への変化

変化は、働く期間だけではありません。求められる「価値」そのものも変わりました。

これからは、一人ひとりの社員が持つ「経験則」や「暗黙知」をいかに集積して、組織として競争を勝ち抜いていく力が必要です。市場の変化が激しく、多様な価値観がぶつかり合う現代において、個人の力には限界があるからです。

したがって、年功序列や役職ではなく、「今、この瞬間に、組織のどのような課題を解決できるか」という「役割」そのものが問われるようになっていくでしょう。つまり、「役割」を支える「経験則」や「暗黙知」の重要度が増すことになります。

結論:「ズレ」こそが「モヤモヤ」の正体

つまり、あなたの「モヤモヤ」の正体とは、「個人の成果で輝いてきたあなた」と「組織全体に貢献する力を期待している会社」との間に生じた「ズレ」そのものなのです。
この「ズレ」に気づかず、「昔はよかった」「なぜ俺を評価してくれないんだ」と嘆くのは簡単です。しかし、それではあなたの50代からの貴重なキャリア後半戦は、不満と焦燥感に満ちたものになってしまいます。

それはあまりにもったいない。

あなたは「お役御免」になった存在ではないからです。
会社にとって、今までとは異なる「新しい役割」を担ってほしい存在なのです。

では、その「新しい役割」とは、具体的に何か。
私は、それを「3つの役割」として定義しています。


新しい役割①:バトンランナー(=価値の再定義とアセット化)

一つ目の役割は、「バトンランナー」です。
あなたは、ただ走る「プレイヤー」ではありません。あなたが培ってきた「経験」という名のバトンを、次の世代に、そして組織に確実に手渡す「走者」です。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。

  • NGなバトン: 「昔はこうだった」(武勇伝、説教)、「俺の背中を見て盗め」(暗黙知の強要)
  • OKなバトン: 誰もが受け取れる形に「翻訳」された「生きたケーススタディ」

50代のあなたの「経験」は、それ自体が会社の貴重な「資産(アセット)」です。しかし、その資産を「今の組織」で通用する「価値」へ再定義(翻訳)しなければ、誰にも受け取ってもらえません。

特に「翻訳」すべきは、あなたの「成功体験」よりも「失敗体験」や「苦労して乗り越えた壁」の経験です。

私の経験ですが、最も人の心を動かし、自分の成長のきっかけになったことは、「昔、こんな大失敗をしてな…」と、自分の弱さや葛藤を誠実に開示してくれた上司の存在でした。

なぜ、あの時自分は失敗したのか。
なぜ、あの時自分は苦しかったのか。
そして、そこから何を学び、どうやって立ち直ったのか。

あなたのその「生々しい経験」こそが、今まさに同じような壁に直面している若手にとって、どの教科書にも載っていない「最高の教材」となります。
あなたの経験を、自慢話ではなく「組織の資産」として「翻訳」し、手渡す。それが「バトンランナー」の第一の役割です。


新しい役割②:ファシリテーター(=人を活かす土壌づくり)

二つ目の役割は、「ファシリテーター」です。
多くの50代が、「育成」という曖昧な言葉に悩まされます。しかし、あなたは「先生」になる必要はありません。

  • NGな役割: 部下を「管理」し、「答えを教える」(Teaching)
  • OKな役割: 部下が「安心して失敗できる土壌」を創り、「答えを引き出す」(Coaching / Facilitating)

あなたの役割は、個々のプレイヤーのパフォーマンスを管理することから、チーム全体の「挑戦することに価値があるという環境」を創り出すことへとシフトします。

若手が萎縮せず、自由に挑戦し、たとえ失敗してもそこから学べる。そんな「土壌」を創ることこそ、50代のあなたにしかできない、極めて高度な役割です。

なぜなら、その「土壌」は、あなたがこれまで培ってきた「失敗体験」「成功体験」や「経験に基づく懐の深さ」がなければ創れないからです。
あなたが「ファシリテーター」として存在し、上からのプレッシャーに対する「防波堤」となり、部下の挑戦的な発言を「後押し」する。
それこそが、組織に「新しい挑戦」をもたらす「人を活かす土壌づくり」そのものです。


新しい役割③:コネクター(=点と点を繋ぐ)

三つ目の役割は、「コネクター」です。
AIや若手には決して真似できない、50代のあなたの最強の資産。「社内外の人脈」であり、「複数の職務を経験し、蓄積してきた経験と実績」です。

  • NGな役割: 自分の部署の利益だけを考える「タコツボ型」
  • OKな役割: 組織の縦割りを壊し、「知」と「人」を繋ぐコネクター(つなぎ手)」

多くの組織は、部門間の「壁」に悩まされています。縦割りの弊害により、隣の部署が何をしているか分からず、同じような失敗を繰り返したり、協力すればすぐに解決する問題に膨大な時間を費やしたりしています。

たとえば、もし、あなたが、
「ああ、その問題なら、A部署の〇〇さんが詳しいよ」
「昔、B部署で似たようなプロジェクトをやった時の資料が、確か…」 というように、あなたの頭の中にある「人脈」と「経験」という「点」を、組織のために繋ぎ合わせる「コネクター(接続者)」になるのです。
自分の部署の短期的な成果だけを追うのではなく、あなたの資産を活かして組織全体の「血流(情報流通)」をより良くする。
役職や肩書がなくとも実行できる、極めて戦略的で価値の高い「役割」です。


あなたの「新しい役割」の力は、すでにあなたの中にある

「バトンランナー」「ファシリテーター」「コネクター」…

そんな役割、今さら自分にできるだろうか、と不安に思われましたか?
大丈夫です。

その力は、外から新しく学ぶものではありません。その原動力のすべては、あなたの50数年の「自分の歴史」の中に、すでに存在しているからです。

1. 「自分史」― あなたの「失敗の歴史」こそが、最高の原石になる

湘南キャリアデザイン研究所では、「キャリアのリノベーション」の第一歩として、ご自身の歴史を丁寧に振り返ることを大切にしています。

スティーブ・ジョブズが語ったように、キャリアとは「点と点」でできていると私は認識しています。
一見、バラバラに見えるあなたの「過去」の経験。それらを結び付けて一本の線にしたときに見えてくる「経験」の価値。その「経験」の価値そのものが、新しい役割を担うための「未来」の力になります。

たとえば、

  • あなたの「失敗の歴史」や「乗り越えた壁」こそが、「バトンランナー」として語るべき最高の「翻訳」の原石です。
  • あなたが「様々な経験で喜んだり、苦しんだ経験」こそが、「ファシリテーター」として組織の力を最大化させる説得力を生みます。
  • あなたの「不本意な異動」や「畑違いの部署での苦労」こそが、「コネクター」として組織を繋ぐための貴重な「人脈」と「視点」になっているはずです。

あなたの過去は、すべて「今」とこれからの「未来」のために存在するのです。

2. 「終活」― 「誰に何を残し、誰に何を託すか」が、あなたの原動力になる

そして、もう一つ。当研究所が「終活」をキャリアデザインの入り口と位置づける理由がここにあります。

「終活」とは、単なる死の準備ではありません。湘南キャリアデザイン研究所は、「終活」を「誰に何を残し、誰に何を託したいか」という、ご自身の価値観の核心に触れる、最も本質的な「問い」と位置付けています。

会社人生の後半戦で、あなたは誰に「何を」残し、誰に「何を」託したいですか?
目先の「スキル」でしょうか?
それとも、「仕事への誇り」や「失敗を恐れない姿勢」でしょうか?
「会社に評価されるため」ではなく、「自分が大切にしたい価値観を、次の世代に残し、そして、託すため」――。
この「託す」という視点を持った時、あなたの「役割」は、義務やタスクから、心からの「願い」へと変わります。
その「願い」こそが、新しい役割を担う上での、最も誠実で、最も力強い原動力となるのです。


「ロスタイム」こそ、あなたの真価が問われる一番熱い時間

50代からの「役割の変化」。
それは、決して「お役御免」でも「消化試合」でもありません。
私が敬愛するアーティスト、角松敏生さんの「ロスタイムが一番熱い時間」という言葉を、今こそあなたに贈ります。

人生の後半戦は、サッカーの試合での「ロスタイム(アディショナルタイム)」に似ていると角松敏生さんはおっしゃっています。

アディショナルタイムでは、

  • 勝っているときは、最後まで油断せず価値をもぎ取りにいく
  • 引き分けているときは、最後のワンプレーで勝ち越しを狙う
  • 負けているときは、勝ちをもぎ取りにいく
  • 負けが決定的であっても、誇りをもって闘い抜く

つまり、どのような状況にあっても、「ロスタイム」は最も熱い時間なのです。

50代からのキャリアにおいて、この「ロスタイムが最も熱い時間」という思いを持つと、「役割の変化」を前向きに受け止められないでしょうか。

あなたの「バトン」を待っている後輩がいます。
あなたが創る「土壌」で、才能を開花させる若手がいます。
あなたが「繋ぐ」ことで、救われるプロジェクトがあります。
あなたの真価が問われるのは、まさに、50代からのキャリアなのです。

湘南キャリアデザイン研究所では、50代からの「役割の変化」を前向きに捉え、残されたキャリアの後半戦と人生をより良くするためのプログラムを提供しています。

そのプログラムは、「誰に何を残し、誰に何を託すか」という視点で捉える「終活」と「自分の歴史を振り返ること」を通した経験価値の捉え直しを柱とする「50代からのキャリアのリノベーション」です。

もし、あなたが真剣に50代からのキャリアをより良くしていきたいとお考えならば、ぜひ、湘南キャリアデザイン研究所のウェブサイトをご覧ください。
きっと、50代からの「居場所」を自ら設計するヒントを手にしていただけると思います。
湘南キャリアデザイン研究所の「キャリア・リノベーション相談」(60分、無料)も是非ご活用ください。

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