はじめに
「終活」と聞くと、あなたはどのようなイメージを持たれるでしょうか。
- 「エンディングノートを書くこと?」
- 「お墓や相続の準備?」
- 「なんだか縁起でもないし、自分にはまだ早い」
おそらく、多くの方がこのように「人生の最期のための準備」といった、少し後ろ向きな印象をお持ちかもしれません。
「50代の棚卸しをしよう」しかし、「したい、してみたい」と、「いや、待てよと」躊躇する。せざるを得ない状況ならば、とりかかっていると思うものの、感情というのは、ままならない。どうすることがよいのか、気持ちが行ったり来たりしてすることが多いのではないでしょうか。
しかし、ここ数年、「終活」は“今をより良く生きるための整理”という前向きな側面が広がっています。具体例として、神奈川県川崎市宮前区ではエンディングノートを住民向けに配布しています。これは「死の準備」を促すだけでなく、連絡先・資産・医療・介護の希望などを整理し、不測の事態に備えて家族の負担を減らし、本人に安心をもたらす——という行政の実務的な取り組みです。
私はこの事実を、「終活=今を生きるための福祉的インフラ」と解釈しています。終活は、もはや私的で縁起でもない行為ではなく、地域社会が安心して暮らすための公的実践へと意味を拡げつつあるのです。
こんにちは。湘南キャリアデザイン研究所の扇慎哉です。
私は30年以上にわたり、人事(HRM)の専門家として多くのキャリアに携わってきました。そして何を隠そう、私自身も43歳の時にキャリアの大きなコンフリクトを経験し、親の看取りや実家じまいという「終活」の渦中で、「このままでいいのか」と深く悩み抜いた50代の一人です。
その経験から、私は確信しています。
50代の今だからこそ、終活はあなたのキャリアを劇的に好転させる「最強の自己分析ツール」になる、と。
この記事では、公的機関が提供するエンディングノートの「価値」と、その一歩先にある「湘南キャリアデザイン研究所が提唱する終活」が、あなたのキャリアと人生を「再定義」する7つのステップについて、具体的にお伝えします。
(※本稿では キャリアのリノベーション(以下、リノベ) という表現を用います)
ステップ1:公的ノートの「価値」を知る
川崎市のように多くの公的機関がエンディングノートを提供しています。行政サービスとして提供されるエンディングノートは、あなたの「もしも」に備えるための非常に優れたツールです。終活を考えるときの「第一歩」に最適です。
それは、万が一の際に必要な情報(連絡先、資産、医療・介護の希望など)を記録(Record)し、家族の負担を減らし、あなた自身に安心をもたらす静的な様式だからです。まずは「自分に関わる情報の項目」を把握し、抜け漏れなく棚卸しできます。
一方で、「記録」を「これから」に活かすためには、意味づけ(解釈)と行動への翻訳(再定義)という一歩先の工夫が必要です。
ステップ2:「終活」を「50代からのキャリアのリノベーション」の入り口とする
私たちが提唱する終活とは、「誰に、何を残し」「誰に、何を託すか」という視点を軸に、50代のキャリアを再設計するための根源的な問いと向き合う営みです。
ここでいう「残す/託す」の対象には、仕事の成果・あなたらしい意思決定の型・後進に受け渡せる知恵といった、“キャリアの資産”も含まれます。会社や世間の評価といった他者軸を外したときに浮かび上がる本心(価値観)を言語化する——それがリノベの出発点となります。
ステップ3:「カネ」と「モノ」の整理で「価値観の源泉」に触れる
最初の一歩は、手に取れる具体から。「カネ(資産・負債)」と「モノ(財産・思い出の品)」を棚卸しします。
ここで一工夫。「なぜ、これを残したい/託したいのか?」と自問してください。
- 古い万年筆 → 誠実さという価値観に気づく
- 特定の金融資産 → 家族志向という価値観に気づく
「カネ」や「モノ」は、あなたが大切にしてきた価値観の“入れ物”です。項目の整理だけでなく、価値観の名詞化(例:誠実さ・家族志向・探究心)まで行い、次の工程(経験=コトの言語化)へつなげます.
ステップ4:「ヒト」の整理で「人間力」という強みを知る
次に「ヒト(人間関係)」です。
あなたが「託したい」と思う大切な人は誰でしょうか。家族、恩人、友人…。
なぜ、その人なのか。
その人と、どのような関係性を築いてきたのか。
この問いは、あなたがキャリアを通じて無意識に培ってきた、「4つの力」のうちの最も重要な一つ、「人間力(信頼関係構築力、他者への影響力)」を言語化するプロセスにもつながります。
ステップ5:「コト(経験)」の解釈で「3つの力」を言語化する
このステップは、湘南キャリアデザイン研究所が提唱する終活において、最も大切にしているステップです。
それは、あなたのビジネスパーソンとしての歴史、「コト(経験)」を、ビジネスパーソンとしての自分の歴史として深く掘り下げるプロセスだからです。
転職を検討する際に作成する職務経歴書は、職務経歴を「事実(Fact)」として整理した書面。湘南キャリアデザイン研究所が提唱する終活では、その職務経歴の背後にある「価値(Value)」を「過去」「現在」「未来」の視点を織り交ぜながら、自分の言葉で「解釈」し、「言語化」することにあります。
その際、意識しておくことをおすすめする視点として、つぎの「3つの力」を提示します。
- 専門力(Expertise):あなたが「これだけは負けない」と自負する、特定の分野での知識やスキル。(例:人事制度設計、品質管理、特定の業界知識)
- 基礎力(Fundamental Skills):どのような環境でも通用する、ビジネスの土台となる力。(例:論理的思考力、課題発見力、資料作成能力)
- 再現力(Reproducibility):一見「属人的」に見える成功体験を、別の環境でも繰り返せる「型(パターン)」にする力。(例:「部門間の対立を調整し、プロジェクトを完遂させた」経験 → これは「利害調整プロセス」という強力な再現力です)
50代はキャリアの変化と対峙する機会が多くなります。たとえば、「自分には市場価値がない」「古いスキルだ」と思い込んでいたあなたの経験(コト)は、「基礎力」「専門力」「再現力」「人間力」という「4つの力」を通して「解釈」してみると、自分に宿っている経験価値を言語化された武器(=底力)として認識できるようになります。
(※「4つの力」については、こちらの記事「50代転職 会社の市場価値を探るには?人生の終点から逆算し、自分の歴史を4つの力で見つめ直す方法」でも詳しく解説しています。)
ステップ6:「キャリアの設計図」を描く(4つの岐路)
50代のキャリアの再設計では、「自分の原点(自分軸)」を探り、「4つの力(底力)」が言語化できたら、「これからどうする」をデザインすることになります。未来の『設計図(Blueprint)』を描くということです。
50代は、大きくつぎの「4つの転機」と対峙する機会があると考えます。
- 自ら「転職・起業」を選ぶ(Active Change)
- 会社(組織)の決定(役職定年・出向・再雇用)を受け入れる(Active Redefinition)
※いったん外部要因に見える選択でも、自分軸で役割を再定義する行為は能動的です。 - 「リタイア」し、次の人生を歩む(Re-creation)
- ハイブリッド型(現職+α)で移行する(Parallel Career)
あなたは、どのような転機と向き合われていますか?
湘南キャリアデザイン研究所が提唱する終活と50代からのキャリアの再設計(キャリアのリノベーション)を掛け合わせると、どのような転機であっても、納得感のある選択を、自ら手に入れることができます。
参考までにそれぞれの転機における具体例をお示しします。
選択1:自ら「転職・起業」を選ぶ(Active Change)
Before: 「強み」を言語化できず、職務経歴書の前で固まり、「市場価値」に自信が持てない。
After: あなたの「4つの力」という『言語化された武器』が手に入ります。それはそのまま「職務経歴書に書ける強み」となり、「面接で語れる揺るぎない自分軸」となります。
選択肢2:会社(組織)の決定(役職定年・出向・再雇用)を受け入れる(Active Redefinition)
Before: プライドが傷つき、「モチベーション」が枯渇。「やらされ感」と「虚しさ」で、残りの時間を「耐える」だけ。
After: 会社の評価軸とは別の「自分軸(原点)」を取り戻します。「耐える時間」が、自分の「底力(特に人間力・再現力)」を活かして「後進を育成する」といった、自分で再定義した「新しいミッション(誇り)」を全うする「熱い時間」に変わります。
選択肢3:「リタイア」し、次の人生を歩む(Re-creation)
Before: 「仕事」という看板を失い、「喪失感」と「生きがい」が見つからない「漠然とした不安」だけが募る。
After: 「仕事=生きがい」の呪縛から解放されます。「終活」を通じて「ヒト(家族・地域)」や「モノ(趣味)」との関わりも見つめ直すため、「一個人として、人生をどう豊かに生きるか」という、生涯にわたる「人生の設計図」が手に入ります。
選択肢4:ハイブリッド型(現職+α)で移行する(Parallel Career)
Before: 「今の会社」に大きな不満はないが、「何か物足りない」。会社以外の「第2の名刺」を持ちたいが、自分の何が武器になるかわからない。
After: 「会社の看板」に依存しない「個人の看板」と、それを実現する「具体的な移行プラン」が手に入ります。まさしく、私自身が「パラレルキャリアの実践者」として、その「設計図」づくりを伴走します。
ステップ7:「ロスタイム」を最も熱い時間として行動する
ステップ6まで完了したら、あとは「行動」あるのみです。私のモットーは、「ロスタイムが一番熱い時間」。
50代からのキャリアは、人生の後半戦。しかし、それは、決して消化試合ではありません。
自分の「価値観」を振り返り、自分の歴史を捉え直して、「4つの力」という「底力(強み)」を言語化する。
50代からのキャリアを自分の意志でデザインした「設計図」に基づき、歩みを進められます。
まとめ:「記録」で終わるか、「解釈」で未来を創るか
公的機関が提供するエンディングノートは、あなたの「もしも」に備える「記録(Record)」のための優れた「ツール」です。
他方、湘南キャリアデザイン研究所が提唱する終活は、「これから」を能動的に生きるための「解釈(Interpret)」と「再定義(Redefine)」です。
あなたは、ご自身の「生きた証」を、単なる「記録」として残しますか? それとも、その記録に眠る「価値」を「解釈」し直し、50代からのキャリア、人生を輝かせる「未来の武器」へと転換させますか?
もし、あなたが「キャリアの終活」を通じて、ご自身の「4つの力」を言語化し、人生の後半戦を主体的にデザインし直したいと少しでも感じられたなら。まずは一度、湘南キャリアデザイン研究所の「キャリア・リノベーション個別相談」で、あなたのお話をお聞かせください。あなたの「キャリアの終活」が、50代からのキャリアを充実させ、自分の人生に納得感をもたらすきっかけになるはずです。